旧国鉄手宮線跡地【北海道小樽市】

旧手宮線跡地 [小樽] 南小樽・中央地区

小樽市には現在のJR南小樽駅から小樽市手宮地区にあった手宮駅(現在の小樽市総合博物館本館)まで間に鉄道路線がありました。

北海道で最初の鉄道であった官営幌内鉄道の区間の一部でありましたが、手宮・札幌間が先行して開業されました。

その後は国鉄時代の1985年に全線廃止となりました。

2001年から小樽市はJRから用地を取得し線路跡地を散策路と整備し始め、現在は市民の散策路のほか線路の上を歩けることから観光客にも人気のスポットとなっています。

おたる旧国鉄手宮線跡地の基本情報や行き方

住所(南側始点)北海道小樽市色内1丁目13-1
住所(北側始点)北海道小樽市色内3丁目7
手宮線の主な出来事
  • 1880年
    官営幌内鉄道の一部として手宮-札幌間が開通

    約35.9キロメートル

  • 1909年
    小樽駅(現在の南小樽駅)-手宮駅間が手宮線となる
  • 1962年
    手宮線の旅客営業を廃止

    過去に何度か旅客営業の休止や再開は行われていました

  • 1985年
    手宮線の全線を廃止
  • 2001年
    JR北海道から用地を取得し散策路を整備

    寿司屋通りから中央通りまでの約510メートル

  • 2006年
    JR北海道からさらに用地を取得

    中央通りから小樽市総合博物館までの約1,160メートル

  • 2013年
    取得した用地を4年計画で散策路の整備工事が開始
  • 2016年
    全ての散策路の整備工事が完了

手宮線跡地の散策路は全長約1.6キロメートルあります。

線路の上を歩くことができ、JR小樽駅から小樽運河へ向かう途中にあるので観光客にも人気の場所になっています。

小樽駅前通りの中央通りから南側の日銀通りまでの間で写真を撮る観光客を多く見かけます。

一方、中央通りから北側(手宮方面)は小樽市民が散歩している姿の方が目につきます。

ただ、小樽市総合博物館に近づくと残っている廃線が複線になったり、ポイントの遺構があったりと鉄道が好きな方は北側の始点まで足を運んでいるかもしれません。

おたる旧国鉄手宮線跡地への行き方・アクセス方法

観光客の方々がよく足を運んでいるのは、中央通りから日銀通りの間のように感じます。JR小樽駅から小樽運河へ向かう途中にあるので、ぷらっと寄っている人も多いと思います。

手宮線跡地の散策路の南端は寿司屋通りから始まりますので、そちらへはJR小樽駅から徒歩で大丈夫です。

一方、北端または北端側にある小樽市総合博物館本館へはJR小樽駅から徒歩でも行けますが、バスを利用するのがいいかと思います。

小樽駅から手宮方面へのバスの路線はいくつかありますが、北海道中央バスの「2 高島3丁目ゆき」「3 手宮ゆき」に乗車し「手宮」で下車するのが良いと思います。

2 高島3丁目ゆき」「3 手宮ゆき」の小樽駅前のバス停は小樽駅前バスターミナルではありません。駅前第一ビルとなりの自衛隊札幌地方協力本部小樽地域事務所が入っているビルの前のバス停になりますのでご注意ください。

おたる旧国鉄手宮線跡地の様子

旧手宮線跡地の散策路の様子

寿司屋通り側はこんな景色から始まります。

旧手宮線跡地の散策路の様子

散策路のそばにはベンチやこども用の遊具が置かれている場所もあります。

旧手宮線跡地の散策路の様子

日銀通りと交差する踏切跡には当時の遮断機が残っています。(現在は使用されていません)

冬の旧手宮線跡地の散策路の様子

冬になるとこんな感じになります。冬の間は除雪されないので歩けなくなりますが、雪あかりの路の会場になるここら辺(市立文学館・美術館前)は雪あかりの路が開催されている期間は整備されると思います。

近年、雪あかりの路は流行り病の影響で開催が縮小されています。それにあわせて手宮線会場の規模も小さくなっています。

旧手宮線跡地の色内駅

休憩所として復元された色内駅。1912年に色内仮停車場として開設されました。閉鎖や再開を経て1943年に色内駅になりました。

旧手宮線跡地の色内駅

その後、色内仮乗降場と名が変わり1962年に廃止されました。

旧手宮線跡地の散策路の様子

線路はJR小樽駅から小樽運河へとつながる中央通りを横切っています。現在は使用されていないので線路前での一時停止は必要ありません。

旧手宮線跡地の散策路の様子

中央通りから手宮側の散策路はここから始まります。

旧手宮線跡地の散策路の様子

この建物は喫茶店だったりします。

旧手宮線跡地の散策路の様子

道中には昔の石倉を利用している喫茶店や踊場なども見かけることができます。

旧手宮線跡地の散策路の様子

一方、町の工場なんかも旧手宮線そばにはあります。

旧手宮線跡地の散策路の様子

線路の他に遺構が残されています。

旧手宮線跡地の散策路の様子

転てつ器は貴重なのか柵で囲われています。

旧手宮線跡地の散策路の様子

旧手宮線跡地の北側の入り口に近づくと単線だった線路が複線になります。

鉄道が好きな方などはこちらまで足を運ぶ方が多いようですが、一般的な観光客は中央通りから旧色内駅がある市立美術館・文学館の間で写真を撮っていることが多いです。

旧手宮線跡地の散策路の様子

足場で囲われている建物は旧日本郵船株式会社小樽支店で国の重要文化財です。令和2年7月から令和6年6月まで保存修理工事が行われております。

旧手宮線跡地の散策路の様子

旧手宮線跡地の北側の入り口はこんな風景です。後ろ(背面)には小樽市総合博物館本館があります。

また、この地点から海側へ100メートルも行かない所に鱗友朝市があります。

官営幌内鉄道計画の当初は手宮線は考えられていなかった

北海道で最初の鉄道となる官営幌内鉄道。札幌と小樽の区間が先行して1880年に開業されました。

しかし、幌内鉄道計画当初は小樽までの鉄道敷設の計画は全くありませんでした。

幌内鉄道の目的は幌内(現在の三笠市)にある炭田から本州へ石炭を輸送することで、当初の案は2つありました。
・幌内から幌向太(江別市)まで鉄道で石炭を運び、石狩川を利用して水運で小樽へ運び船を変え、小樽から本州へ
・幌内から室蘭まで鉄道を敷き、室蘭から船で本州へ

室蘭までの鉄道敷設には莫大な費用がかかるため政府などが消極的だったようで、石狩川を利用する鉄道・水運併用案が有力になりました。

水運併用案を遂行するために招かれたのはオランダのヨハン・G・ゲント氏とアメリカのジョセフ・ユリー・クロフォード氏でした。

運が悪かったゲント氏

鉄道・水運併用案では石狩川での水運の比重が高く、ゲント氏を中心に計画を進める予定だったようです。

一方、クロフォード氏は幌内・幌向太間の鉄道敷設の担当をしますが、短距離だったため札幌周辺の道路整備も任されていたようです。

ゲント氏が来日した翌年(明治12年)の春に雪解け水などで石狩川が氾濫してしまいます。この水害により、石狩川を利用する併用案の雲行きが怪しくなります。

凄腕だったクロフォード氏

クロフォード氏は明治11年12月に来日します。来日が12月だったため、雪深くなっている幌内での作業が無理だったため、小樽・札幌間の馬車が通行可能な道路建設に着手します。

小樽・札幌間の道路はすでにあったようですが、海が荒れると危険だったり荷馬車が安全には通行できないような状態だったようです。

開拓使は以前にイギリス人に小樽・札幌間の道路建設の見積もりをしてもらったことがありますが、その見積額は85万円でした。しかし、クロフォード氏が出した見積額は5万円。

この見積額により、小樽・札幌間の道路建設をクロフォード氏に任せることになります。

そして、この工事を5か月間で終わらせてしまいます。

完成した馬車道を利用することで小樽・札幌間の鉄道敷設が技術・財政面で可能となりました。

クロフォード氏は小樽・札幌間の馬車道が鉄道へと変わることを想定して馬車道建設をいたようです。

石狩川が氾濫しなければ、そして、クロフォード氏が低予算で短期間に小樽・札幌間に馬車道を通さなければ、手宮線って存在していなかったのかもしれません。

手宮・札幌間の鉄道は日本で3番目ではない!?

「手宮・札幌間の鉄道は北海道で最初、全国でも3番目になる鉄道」と紹介されているのを見かけますが、岩手県の釜石鉱山鉄道が手宮・札幌間の開通の9か月ほど前の明治13年2月に運転が開始されているようです(製鉄所・鉄道仮開業式は同年9月)。

そして、手宮・札幌間が開通した明治13年11月時点での官営幌内鉄道としてのスタンスは仮開業です。

日本人って三大とか「3」って好きですから入れたい気持ちはわかりますが、小樽市民として「北海道で最初に通った鉄道路線」だけで十分かなと思いますがいかがなものでしょうか。

手宮線が日本で何番目の鉄道か?についてはこちらのサイトもご参考いただければと思います。

参考サイト 小樽百景~手宮線は日本で○番目の鉄道?

まとめ

本記事を読んでいただきまして、ありがとうございました。

観光客の方たちにとっては線路の上を歩けたり、写真や動画の撮影場所として人気がありますが、小樽市民にとってはよい散策路でもあります。

中央通りから手宮側は観光客の方々が少なくなり、ゆったりした雰囲気になります。

手宮線通って手宮まで行ってその帰りは北運河を通るとか、その逆もしかり。時間あれば歩いてみてください。

本記事の内容は主に書籍「おたる案内人公式テキスト」を参考にしております。

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